不動産投資にかかる費用を徹底解説|初期費用からランニングコストまで網羅

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不動産投資 費用
投資目的で不動産を購入し収益化する不動産投資においては、家賃収入だけでなく諸費用を押さえることも重要です。
諸費用には物件の購入金額、税金といった初期費用と、固定資産税やローンといったランニングコストがあり、支出の全体をイメージしておくことが大切です。
たとえば中古の戸建てやマンションは物件価格が安くなる一方で修繕費が高くなってしまい安く、結果的にあまり利益が残らなかったというケースもあります。
このように、不動産投資を成功させるためにはかかる税金や費用を正しく把握しておくことがポイントだといえます。
この記事では不動産投資にかかる初期費用とランニングコスト、費用を抑えるためのポイントについて解説します。

1. 不動産投資で発生する費用の全体像

不動産投資においてランニングコストは建物の状態や地域によって大きく変動しますが、初期費用については一般的に物件購入金額の10%前後とされています。
ただし購入する中古物件を収益物件にするための修繕費が高くなるケースも少なくありませんので、あくまでも参考情報として把握しておくことをおすすめします。

2. 不動産投資の初期費用とは?基本的な考え方

初期費用の中にはどの不動産を購入してもかかる費用がありますが、全ての費用をローンで資金調達できるわけではありません。
内容によっては自己資金で支払う必要もありますので、不動産会社から初期費用の内訳について教えてもらっておくことが大切です。
この章では不動産投資の初期費用と支払いタイミングについて、解説します。

2-1. 頭金・手付金の目安

不動産を購入する費用は大きく分けてローンと自己資金によって捻出することになり、自己資金は「頭金」や「手付金」と呼ばれます。
一般的には頭金や手付金の目安は物件価格の10%程度とされており、売買契約時に売主へ支払うケースが多いです。
この費用は売買代金の一部として充当され、決済時には残代金を支払うことで全ての代金を支払うことになります。
そのためローンの融資が間に合わず自己資金で用意することになりますが、物件価格によっては準備できないこともあります。
その際には用意できる資金を頭金や手付金として取り扱えないか、不動産会社を通じて売主に相談することがポイントです。

2-2. 不動産仲介手数料

不動産会社の仲介によって物件を購入した場合、仲介手数料が発生します。
この手数料は国土交通省によって上限額が決められており、売買代金によって変動します。
売買代金が200万円以下:売買代金×5%+消費税
売買代金が200万円を超え400万円以下:売買代金×4%+消費税
売買代金が400万円を超える:売買代金×3%+6万円+消費税
ただし800万円以下の低廉な空き家や空き地等を売却する場合、30万円+消費税が上限額となります。
支払いタイミングは売買契約時や決済時に全額だったり、契約時と決済時に分けて支払うなど不動産会社と地域によって様々です。
場合によっては融資に組み込むことができないこともありますので、注意が必要です。
参考:空き家等に係る媒介報酬規制の見直し

2-3. 登記費用(登録免許税・司法書士報酬)

所有権を取得するためには売主から所有権を移転する必要があり、そのためには法務局に登記を申請して税金を納めなければなりません。
登録免許税と呼ばれるこの税金は購入する不動産の固定資産税評価額をベースに課税され、税率は2%ですが現行法令では令和8年3月31日までの所有権移転登記であれば1.5%になります。
また司法書士に登記を依頼する場合は報酬が必要になり、登録免許税と合わせて支払うケースが一般的です。
司法書士の報酬は地域や取引内容によって変動しますので、事前に見積を取得して確認しておくことをおすすめします。
なお、投資ローンを組み抵当権を設定する場合は抵当権設定費用もかかり、借入額の0.4%が税率です。
参考:登録免許税の税額表

2-4. 不動産投資ローンの事務手数料・保証料

不動産投資ローンを組む場合は金融機関に事務手数料を支払うことになり、融資条件によっては保証会社への保証料も必要です。
多くの金融機関では事務手数料か保証料のどちらか一方を融資条件に組み込んでおり、借入額の1〜3%で設定されます。
たとえば1,000万円の投資ローンを組んだ場合、10万円〜30万円を金融機関に支払う手数料として用意しておくことになります。

2-5. 税金関連(印紙税・不動産取得税)

不動産を購入する際には登録免許税以外にも「印紙税」と「不動産取得税」を支払う必要があり、印紙税は売買契約書に記載されている売買代金によって次のように変動します。

売買価格 印紙代
10万円を超え50万円以下 200円
50万円を超え100万円以下 500円
100万円を超え500万円以下 1,000円
500万円を超え1,000万円以下 5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下 10,000円
5,000万円を超え1億円以下 30,000円
1億円を超え5億円以下 60,000円
5億円を超え10億円以下 160,000円
10億円を超え50億円以下 320,000円
50億円を超える 480,000円

印紙税は売買契約書に印紙を貼付し割印することで納税となり、不動産会社に印紙代を支払って印紙を用意してもらうケースもあります。

また売主が売買契約書の原本を所有せずコピーを保管する場合、地域によっては印紙代を売主と買主で折半するケースがあることも知っておくべきポイントです。

不動産取得税については不動産を取得した翌年に確定申告を行うことで税額が確定しますが、2025年時点で土地と建物の税率は4%から3%に減税されています。

そのため購入タイミングによっては想定よりも不動産取得税が高くなることも考えられますので、購入時期が決まれば総務省のHPでチェックすることをおすすめします。

参考:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁
参考:総務省|地方税制度|不動産取得税

2-6. 火災保険料・地震保険料

火災保険や地震保険の加入は法的義務はないものの、火災や地震発生時に大きな安心材料となりますので、加入することをおすすめします。
建物の評価額や構造によってどちらの保険料も大きく変動しますので、購入前に売主経由で見積を取得してもらい、物件購入の判断材料にする投資家も多いです。
なお、火災保険料と地震保険料は初回費用だけでなく、契約更新時に費用が発生するためランニングコストとしても考慮しておく必要があります。

2-7. 固定資産税・都市計画税の精算やその他諸費用

物件購入時に売主へ支払う費用は売買代金だけでなく、固定資産税や都市計画税の日割り精算額も必要です。
固定資産税と都市計画税は1月1日時点で不動産を所有している人に4月から5月ごろ納税通知書が発送されます。
そのため所有権移転した時期によっては売主は所有権を放棄したにもかかわらず1年分の固定資産税や都市計画税を事前に支払っていることになりますので、決済時に日割りで精算するのが一般的です。
これ以外にかかる費用として、投資ローンを不動産会社に斡旋してもらった場合の融資代行手数料などがあります。

3. 中古物件なら修繕費に要注意!追加でかかる費用の見極め方

中古物件は新築と違って経年劣化が進んでいる可能性が高く、入居者が快適に暮らせるようにするためには多額の修繕費がかかってしまうこともあります。
修繕費が高くなるポイントは「水回り設備」と「耐震性」で、設備の導入年月日や動作チェックは購入時に確認しておくべきといえます。
しかし耐震性の場合は柱や梁を確認する必要があり、建築の知識がない状態では判断がつかないケースも多いです。
そこで、築年数が古く耐震性に不安を感じる場合は購入前にインスペクションを利用するのがおすすめです。
インスペクションは建築士などの資格保有者が建物のキズやヒビをチェックし、修繕ポイントをレポートにしてくれるサービスです。
このサービスを利用することで、耐震性を担保している物件かどうかある程度判断することができます。
耐震性についてより正確に知りたい場合は行政の耐震確認サービスを利用することもできますが、予約制で何ヶ月間もかかることがありますので物件購入を急ぐ場合はインスペクションを検討するのがポイントといえます。

4. 初期費用を抑えるためのポイント

初期費用を抑えることで家賃を必要以上に高く設定することなく、計画通りに利益を回収することができます。
この章では初期費用を抑えるためのポイントを紹介します。
全てのポイントが実現可能というわけではありませんが、物件購入前の知識として知っておくべきですので参考にしてください。

4-1. 融資に強い業者や売主物件を選ぶ

投資ローンは住宅ローンよりも金利が高く、条件も厳しくなる傾向がありますので、投資ローンに強い金融機関を紹介してくれる不動産会社を選ぶのがポイントです。
投資ローンを借りる場合は事務手数料や保証料がかかり、金融機関によっては3倍近く費用が変わることもあります。
そのためローンの融資先は必ず複数紹介してもらい、比較検討することをおすすめします。
また、売主物件を選ぶことで仲介手数料を削減できるという点も大きなポイントです。
不動産会社に支払う仲介手数料は売主と買主の契約を「仲介」した報酬となるため、売主が宅建業者の場合は自ら販売するため、仲介にはなりません。
このように、少しの工夫で初期費用を抑えることができます。

4-2. 仲介手数料の交渉や諸費用ローンの活用

気に入った物件が売主物件ではない場合は仲介手数料がかかってしまいますが、不動産会社や物件の状況によっては仲介手数料の交渉に応じてくれる場合もあります。
たとえば販売が長期化している物件の場合、不動産会社としても広告費をかけ続けるよりは仲介手数料の交渉を受けても売却したいと判断するケースもあります。
仲介手数料は不動産会社にとって大きな収入源であるため応じてくれる会社は少ないですが、相談してみることは大事だといえます。
これ以外にも不動産会社を介さずに金融機関を探すことで融資代行手数料を削減したり、自分で登記することで司法書士の報酬を削減することが可能です。

4-3. 保険や保証内容を見直す

火災保険の補償内容は火災だけでなく、オプションを追加することで洪水や盗難などにも対応することができます。
保険は万が一の安心材料になるためなるべく多くのオプションを付けたくなりますが、最低限にすることで保険料を抑えられます。
見直すことで削減効果の高い保険として、団体信用生命保険があります。
団体信用生命保険は債務者が万が一死亡したり重大な障害状態になった場合に残債の支払いが免除される保険ですが、オプションによって三大疾病や悪性腫瘍に罹患した場合でも適用となります。
ただしオプションを付与することで金利や諸費用が高くなってしまいますので、将来のリスクと保険料とのバランスが重要です。

4-4. 築年数や構造で修繕リスクを回避する

中古物件を購入する際には、なるべく築浅物件で耐久性の高い構造の物件を選ぶのがコツです。
築年数と構造は耐震性や耐久性に大きく影響し、修繕費用を削減し修繕タイミングを遅らせることができます。
物件価格は相場よりも高くなるケースもありますが、総合的に判断して初期費用が安くなるのであれば、検討すべき物件といえます。

5. 不動産投資の運用時にかかるランニングコストを把握しよう

不動産投資を成功させるためには初期費用だけでなく、ランニングコストも意識しておく必要があります。
なぜならランニングコストは初期費用と違って継続的な支払いが必要となり、物価や人件費の高騰によってコストアップする可能性があるからです。
そのためランニングコストの内訳は常に把握し、削減できる箇所がないかチェックしておくことが重要です。
この章では不動産投資にかかる代表的なランニングコストを紹介します。

5-1. 管理費・修繕積立金

管理会社に支払う管理費や将来の大規模修繕に備える修繕積立金はアパートやマンションを活用した不動産投資において必須のランニングコストとなっていますが、築年数の経過や管理会社の変更によってコストが変動することがあります。
特に大規模修繕工事が予定されている時期になると予算が足りず、特別徴収されたり修繕積立金がアップすることもありますので、運用時の注意点といえます。

5-2. 税金関連(固定資産税・都市計画税など)

固定資産税や都市計画税は不動産を所有している間支払い続けることになる税金となっており、物件周辺の不動産取引や市場価値、物件自体の資産価値によって変動します。
一般的に建物は経年劣化によって資産価値が下がるため固定資産税も減少しますが、リフォームをするなど資産価値が増える工事を行うと固定資産税も増加することがあります。
一方、土地については不動産の流動性が高く将来的な資産価値向上が見込まれると判断された場合、3年に1度の評価替えで増税になることも少なくありません。
このように不動産の所有権を維持するための税金は一定ではないことを、知っておく必要があります。

5-3. 入居者募集・広告費

空室になると家賃収入が途絶えてしまい利回りが悪化してしまうことから、新しい入居者をなるべく早く探す必要があります。
入居者を探す場合はインターネットや紙媒体を使った広告が有効であり、不動産会社に広告費を支払って宣伝してもらうのが一般的です。
広告費は入居候補者に目立つようアピールしたり多くの媒体を利用することで増加してしまい、収支をさらに圧迫する原因にもなりかねません。
そのため反響が少ない広告手法はすぐに中止し、費用対効果の高い広告にリソースを集中するように工夫するのがポイントです。

5-4. 物件管理会社への委託費用

物件管理はオーナー自ら保守点検を行う自主管理という方法もありますが、多くの投資家は管理会社に管理を委託しており、委託費用をランニングコストに含めています。
管理委託費用は委託内容によって異なり、必要不可欠かつ手間のかかる管理項目を管理会社に委託し、手間がかからない管理業務はオーナー自ら管理することでコスト削減することが可能です。
たとえば設備の保守点検や家賃滞納のフォロー、クレーム対応などは手間がかかるうえに対処するためにはノウハウが必要ですが、草むしりや共有部の電球交換などは比較的簡単に対応できます。
このように管理会社へ委託する業務と自分で対応できる項目を選択することが、ランニングコストを下げるコツといえます。

5-5. 保守点検やリフォーム・修繕費

室内や共有部の設備を保守点検し定期的に修繕することで入居者は快適に生活することができ、長く住んでくれるようになります。
入居期間が長くなれば入居者募集のための広告費を削減できますので、保守点検費用は必ず収支計画に必要経費として盛り込んでおくことをおすすめします。
ただし経年劣化が進むと修繕箇所が増えてしまいますので、その場合は大規模リフォームを検討しなければなりません。
居住空間全体をリフォームする場合、マンション1室であれば500〜800万円ですが一戸建ての場合は1,000万円を超えることもあります。
そのためリフォームやリノベーションを検討する場合はなるべく早い段階から複数の会社に見積と工事プランの提案を受け、資金を確保しておくことが大切です。

5-6. ローン返済や金利の負担

投資ローンを組んだ場合、借入額に利子を加えた金額を設定した借入期間で返済することになります。
これにより月々の返済額が決まることになりますので、複数の金融機関を検討し条件が少しでも良い機関から融資を受けることがポイントです。
また、日銀や政府から金利上昇が発表されることもあり、上昇前に金利を組むこともランニングコストを抑えるうえで重要です。
このように、金利を安くできる金融機関や時期を見定めることが大切だといえますが、金利が安くてもサービスの質が悪いというケースもありますので、金利だけでなくサービスや融資条件など総合的に判断する必要があります。

まとめ

不動産投資によって利益を得るためには初期費用とランニングコストを抑えることが重要といえ、そのためにも内訳を正しく理解しておくことがポイントです。
初期費用は購入する物件の状態や価格によって変動する点が多く、ランニングコストは修繕費用や修繕頻度が影響します。
どちらのコストもなるべく削減することで利益を増やすことができますが、入居者が快適に生活できる物件でなければすぐに退去してしまい、利回りが悪化してしまいます。
不動産投資は短期的に高利益を得るよりも長期的に安定した利益を得る方がリスクが少なくなり、収益物件としての価値が高くなることから将来高値売却することも可能になります。
このことからも初期費用とランニングコストの内訳を把握したうえで必要不可欠な項目をピックアップし、最適なコストバランスにすることが成功のコツといえます。

投稿者プロフィール

naruto
1987年生まれ。高校卒業後に工場勤務し、21歳から不動産業界(賃貸)に足を踏み込みました。24歳のときからマンション、土地、一棟アパートの売買仲介に携わり、これまで決済した案件の総額は100億円を超えます。現在は妻と子、犬と一緒にのどかに暮らしています。