収益物件を購入して入居者を募集し、賃借人から賃料を得る不動産投資はFXや株よりも手間がかからないうえに建物や土地といった有形資産を得られることから、人気のある投資となっています。
そのため投資を目的として物件を購入する投資家も増えていますが、賃貸人として賃貸借契約を締結する際には様々な義務が発生することになり、不動産関連の法律知識は不動産投資家として必ず習得しておくべきといえます。
しかしフォローすべき法律は非常に多く毎年のように改正されたり新しい法整備が公表されることから、プロの専門家にすぐ相談できる環境がなければ完全に内容を理解することは難しいといえます。
場合によっては法律違反に気づかないまま賃貸物件を運用してしまい、借主から賃貸契約の解除や損害賠償を請求されることもあります。
また所有している賃貸住宅が都市計画法や建築基準法に違反しており、将来売買できなかったり再建築の許可がおりないという失敗事例も少なくありません。
この記事ではこうした不動産投資のトラブルを防ぐためにも、不動産投資に関連する基本的な法律について分かりやすく解説します。
なるべくリスクを抱えることなく不動産投資をしたい人や問題解決の方法を知りたい人は、参考にしてください。
不動産投資で押さえておきたい基礎法律
個人間での取引を行う場合は原則、民法を基準に契約書を作成し問題解決の方法や規制について取り決めを行いますが、不動産取引の場合は民法の特別法として借地借家法や宅建業法も関連します。
この章では民法と借地借家法、宅建業法について詳しく解説します。
民法と物件の権利関係
不動産取引において民法が関連するケースは多く、たとえば売買契約締結後に代金が支払われなかったり所有権が移転できない場合や引き渡し後に契約不適合が発生した場合などは、原則民法によって紛争の解決を試みます。
また売買だけでなく賃貸においても貸主は所有権を保持しているからといって借主を理由なく退去させることはできず、一定期間の猶予と理由が必要です。
そのため収益を得ている物件を売却したいと考えても賃借人が居住する権利が保護されており、契約の内容によっては売却することができないケースもあります。
このように不動産投資をする場合は民法によって保護されている賃借人の権利を知っておくことが重要だといえ、基礎知識として習得しておくことをおすすめします。
借地借家法のポイント
借地借家法では「建物の所有を目的とする地上権及び土地井の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃借権の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続きに関し必要な事項を定めるものとする」という規定があり、この法律によって賃借人は強力に保護されています。
賃貸人は賃借人から家賃を得る代わりに物件を使用させる義務があり、アパートやマンションのように特定多数の賃借人がいる場合はトラブル解決に協力しなければなりません。
また賃借人が一般的な方法で賃貸住宅を使用していたにも関わらず設備などが破損した場合は修繕する必要があり、適切に使用されていたのであれば退去時に敷金の変換が義務付けられています。
これ以外にも期間内で売却する際には正当な理由が必要になったり契約内容によっては建物を買取しなければならない等、賃貸人にとって不利な内容が多く含まれています。
このような内容になっている理由として不動産の権利は所有権が最も強いという性質があるからであり、所有権を保持している賃貸人とバランスを取ることを目的としているからです。
そのため賃貸物件を相続したり不動産会社から十分な説明を受けないまま購入して後悔するオーナーもいますので、正しく理解しておくべき法律といえます。
宅地建物取引業法(宅建業法)の役割
宅建業法も民法の特別法ですが、宅建業者が売主だったり売主と買主の両方が宅建業者ではない場合に適用される法律です。
不動産取引における消費者保護と流通の円滑化を目的としており、不動産のプロである不動産会社が重要事項説明書を説明したり契約書に押印することでトラブルを防止しています。
また不動産会社と一般人では不動産に関する知識と経験に大きな差があることから、不動産会社が利益を優先しないよう宅建業法によって制限されています。
宅建業者である不動産会社は宅建業法で定められた義務と制限を順守していますので、収益物件の購入や手続きを安心して任せることができます。
都市計画法と建築基準法が不動産投資に及ぼす影響
不動産投資では民法以外にも重要視される法律がありますが、代表的な法律に「都市計画法」と「建築基準法」があります。
どちらの法律も遵守しなければ建物を建築することはできず、遵守していない建築物は違法建築扱いになってしまいます。
その結果相場よりも安い金額でしか売却できなかったり税金関連の優遇措置が撤廃されることもありますので、注意が必要です。
この章では都市計画法と建築基準法について、詳しく解説します。
都市計画法による用途地域と建築物の制限
都市計画法によって無秩序な開発や市街化を防ぎ、計画的に効率の良い街づくりを形成することが定められています。
都市計画法では市街化区域と市街化調整区域という区域が定められており、次のように定義されています。
- 市街化区域:既に市街地を形成している区域および概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域
- 市街化調整区域:市街化を抑制すべき区域
また、市街化区域では13種類の用途地域が設けられており、次のような特徴があります。
用途地域名 | 内容 |
---|---|
第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のみ建築可能。もっとも建築制限が厳しい。 |
第二種低層住居専用地域 | 低層住宅に加え、コンビニエンスストアなど150㎡以下の商業施設の建築が可能。 |
第一種中高層住居専用地域 | 500㎡以下の商業施設であれば建築が可能。また、幼稚園や保育園も建築可能な地域。 |
第二種中高層住居専用地域 | ショッピングセンターなど1,500㎡以下の商業施設であれば建築が可能。 |
第一種住居地域 | ホテルなど3,000㎡以下の商業施設であれば建築が可能。 |
第二種住居地域 | カラオケボックスやボーリング場など10,000㎡以下の商業施設であれば建築が可能。 |
田園住居地域 | 2階建て以下の農産物直売所やレストランの建設などが可能だが、基本的な制限は第一種低層住居専用地域と同様。 |
準住居地域 | 国道や市道といった幹線道沿いに多く見られる地域。 |
近隣商業地域 | 基本的な制限は第一種低層住居専用地域と同様で、300㎡以下の自動車整備工場などが建築可能。 |
商業地域 | 近隣商業地域よりも大幅に規制が緩和された地域。駅前に多い。 |
準工業地域 | 危険を伴わない工場であれば建築できる地域。 |
工業地域 | どのような工場でも原則制限なく建築が可能。 |
工業専用地域 | 工場専門の地域。一般住宅の建築は原則不可。 |
これ以外にも前面道路が都市計画道路に認定されることで将来立ち退きの可能性があるなど、都市計画法でチェックすべきポイントは多いです。
建築基準法と安全性・利便性に関する規定
都市計画法で認められている建物だったとしても、建築基準法を順守していなければ合法的な建築としてみなされず、ローンを受けられないなどのデメリットを受けることになります。
建築基準法で定められている代表的な制限は以下の通りです。
- 道路法における制限:原則4m以上の道路に2m以上接していなければならない。ただしセットバックや認定道路の認定を受けることで接道許可がおりるケースもある。
- 建物の規模に関する制限:土地面積に対する建築面積は建ぺい率、延べ床面積は容積率によって制限される。都市計画法の用途地域や道路の方位などによって規制、緩和される。
- 建物の高さ制限:道路斜線制限、近隣斜線制限、日陰による高さ制限、北側斜線制限があり、都市計画法の用途地域によって定められている。
不動産特定共同事業法(不特法)で求められる許可と遵守事項
不動産特定共同事業法は事業主の資金調達を円滑にすることを目的としており、トレンドに合わせて何度も法改正をしてきました。
投資家も気軽に不動産投資を行えるようになったため、知っておきたい法律知識といえます。
この章では不動産特定共同事業法(通称、不特法)の概要と事業者の義務について、解説します。
不特法の概要と事業者の義務
不特法は事業主が複数の投資家から資金を調達して不動産投資を行い、収益と投資家に分配するという仕組みとなっており、少額の資金でスタートできることから初心者の投資家でも安心して投資することができます。
事業を事業主が主体となって運営することもあれば投資家も参加することもあり、事業形態が匿名組合型、任意組合型、賃貸借型のどれになるのかで決まります。
そのため投資家は投資する事業者の活動内容をチェックし、自分に合った事業内容に資金投入することができます。
不動産クラウドファンディングと金融商品取引法
不動産クラウドファンディングも不特法に該当しますが金融商品取引法にも該当するため、投資家を守るために厳しい制限が設定されています。
また金融商品取引法は投資チャネルが複雑化するにつれ改正を繰り返し、より投資家を保護できるような仕組みに変化してきました。
このような法整備によって安全な不動産投資ができるようになっており、投資家が増える要因にもなっています。
サイト:新しい金融商品取引法制について
まとめ
不動産投資は地主だけでなく副業としても相性が良いことから興味のある人は多いですが、関連する法律を理解しておく必要があります。
特に民法と都市計画法、建築基準法は必ず押さえておくべきといえ、購入する不動産の資産価値を正しく判断するうえでも重要です。
また投資家を保護したり投資しやすくなる法律も整備されていることから、不動産投資を始める前には関連法律を調べ、プロに相談しながら理解を深めることをおすすめします。
投稿者プロフィール
- 1987年生まれ。高校卒業後に工場勤務し、21歳から不動産業界(賃貸)に足を踏み込みました。24歳のときからマンション、土地、一棟アパートの売買仲介に携わり、これまで決済した案件の総額は100億円を超えます。現在は妻と子、犬と一緒にのどかに暮らしています。
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