不動産売買において不動産業者に仲介を依頼した場合は報酬として仲介手数料が発生しますが、低価格帯の空き家を取引した場合でも同様にかかります。
しかし、不動産会社が受け取れる報酬額は国土交通省が定める報酬規程によって上限が設定されており、さらに物件の売買価格によって変動します。
つまり物件価格が安い仲介は宅建業者にとってリスクに似合わない業務といえ、媒介業務を断る業者もいます。
そこで宅地建物取引業によって報酬の最低額が定められるようになりましたが、2024年6月の改正によりこの最低額が引き上げとなりました。
この記事では空き家を不動産会社の仲介で売却する際の最低報酬額について、解説します。
仲介手数料が引き上げになることのメリットとデメリットについても紹介しますので、参考にしてください。
不動産仲介手数料とは
不動産業者と媒介契約を締結して建物や宅地などを売買する場合、媒介報酬として仲介手数料を支払うことになりますが宅地建物取引業によって次のように上限額が定められています。
売却価格が200万円以下:取引金額の5%+消費税
売却価格が200万円を超え400万円以下:取引金額の4%+2万円+消費税
売却価格が400万円を超える場合:取引金額の3%+6万円+消費税
たとえば500万円の空き家等を仲介によって不動産売却した場合、売主と買主はそれぞれの業者に最大21万円(税抜)を支払うことになります。
なお、売主が宅建業者の場合は建物から消費税を差し引いた金額に土地の価格を加算し、上記の計算式で計算するというルールがあります。
このようにほとんどの不動産取引では仲介手数料が発生することから、諸費用に含めておく必要があるでしょう。
低廉な空き家等の仲介手数料
前述したように不動産会社の儲けは取引した価格によって決まることから、安い空き家の売買にはかかわりたくないと考える業者もいます。
しかし日本が抱える空き家率増加の問題を解決するためには不動産会社の販売協力が不可欠となることから、法改正によって令和6年7月1日以降の取引では一定条件を満たした取引については報酬額の上限をアップすることが決まりました。
この章では低廉な空き家を売却した場合の仲介手数料について、解説します。
これまでの空き家の仲介手数料
これまでの仲介手数料は前述した計算式に加え、400万円以下の物件を取引した場合は税抜で最大18万円まで売主に請求できるという特例がありました。
これは宅建業者が販売委託を受けやすくするためであり、調査費などを請求できることから空き家を流通させ販売促進に繋げるという目的がありました。
しかし2023年から物価と人件費が高騰し、報酬額をアップしても赤字になってしまう業者が増加してしまいました。
その結果、空き家問題を根本から解決できるほど空き家の取引数は増加していないのが現状です。
2024年7月からの空き家の仲介手数料
令和6年6月21日の官報で宅地建物取引業が改正されたことが公表され、法改正の内容は価格が安い空き家を売却したい人に大きな影響を与えることになりました。
そのため今後家屋を売却する場合は価格と手数料の関係性を正しく把握し、想定より手残り額が少なくならないように注意する必要があるでしょう。
【参考サイト:国土交通省官報】
800万円以下の物件で引き上げ
今回の法改正によって、売買価格が安い取引の仲介手数料は次のように変更となりました
変更前:売買代金が400万円以下の取引に対し、最大18万円まで請求することができる
変更後:売買代金が800万円以下の取引に対し、最大30万円まで請求することができる
このように宅建業者にとっては報酬額がアップし、売却の依頼者である売主は手残り額が減る方向に修正されたことになります。
また、従来はこの特例が適用されるのは売主だけで買主は通常の計算方法で計算された上限額となっていましたが、今回の法改正により買主の支払いも同様に増えることになりました。
両手取引に
売主から不動産の販売を委託された販売業者は報酬額が増えるため、積極的に販売するようになります。
そのため売主業者が買主を見つける可能性も高くなり、売主と買主の両方から報酬を得られる「両手取引」になるケースも少なくありません。
さらに空き家の早期売却にも繋がりやすいというメリットがあることから、今後も物価や人件費が増加し続けた場合はさらに変更される可能性もあるでしょう。
賃貸借取引の報酬額も変更
賃貸の仲介手数料も今回の法改正によって変更となり、家賃の0.5ヶ月分から2ヶ月分となります。
ただし特例が適用されるのは長期にわたる空き家物件の場合となっており、さらに貸主のみが支払い増加となります。
そのため借主への影響はないことがポイントです。
売主のメリット・デメリット
国土交通省が規定する仲介手数料の上限引き上げは、売主にとってどのような影響があるのでしょうか。
この章で詳しく解説していきます。
断られていた物件も取り扱ってもらえる可能性がある
不動産は高く売れなければ不動産会社の儲けは少なくなるため、築年数の古い空き家や再建築不可物件は断られることもあります。
その点、今回の法改正によってこのような理由から懸念していた物件であっても販売の委託を受けてくれる可能性が高くなるため、売主にとって大きなメリットといえるでしょう。
仲介手数料が上がる
売れない物件を所有している売主にとっては大きなメリットですが、特に問題なく売れる物件を所有している場合は単純に支払う仲介手数料が増えることになるため、デメリットといえます。
空き家投資家にとってのメリット・デメリット
仲介手数料が増えることは売主だけでなく買主にも影響がありますが、空き家投資家にとっては今後の収益計画を見直すことも考えられます。
この章では空き家投資家にとって今回の法改正がもたらす影響について、解説します。
これまでに無かった物件が市場に出てくる可能性がある
販売の委託を躊躇していた不動産業者が積極的に空き家を取り扱うことで、これまでにはなかった物件が公開される可能性が高くなります。
この影響は優良物件を常に探している空き家投資家にとって、大きなメリットといえるでしょう。
初期費用が高くなる
空き家投資において初期費用を抑えることは重要ですが、仲介手数料の上限が引き上げになるということは初期費用も高くなる可能性があるといえます。
そのため将来の賃料設定や想定利回りなどに影響することになり、収益化するタイミングが遅れるリスクを抱えることになります。
これにより購入する空き家をより慎重に選ばざるを得なくなるのが、大きなデメリットです。
まとめ
2017年に仲介手数料について一度改正され、400万円以下の物件に対して最大18万円の仲介手数料を請求できるようになりました。
そして今回の法改正によって2024年7月1日以降は800万円以下の物件に対して最大30万円の仲介手数料が請求できるようになり、さらに買主にも同様に請求が可能です。
このことからも、売主と買主はどちらも低廉な空き家の売買について仲介手数料を読み間違えないよう注意する必要があります。
特に空き家投資家は収益化が遅れる可能性もあることから、仲介手数料はしっかりチェックしましょう。
投稿者プロフィール
- 1987年生まれ。高校卒業後に工場勤務し、21歳から不動産業界(賃貸)に足を踏み込みました。24歳のときからマンション、土地、一棟アパートの売買仲介に携わり、これまで決済した案件の総額は100億円を超えます。現在は妻と子、犬と一緒にのどかに暮らしています。
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