タワーマンションを節税目的で購入する人は多いですが、2024年になり相続税の計算について税制改正がありました。
これにより建物と土地が分離して計算されるようになり、従来と同様の節税効果を得られなくなったため注意が必要です。
この記事ではタワマンの税金について、相続税評価の新ルールや相続税の計算方法について解説します。
タワマン節税とは
タワマンは多くの区分所有者とマンションの土地を共有しているため、戸建てよりも土地の評価額が大きく減額されます。
またタワマンは高層階マンションとなりやすく、最上階に近づくにつれ評価額が下がるという性質を備えています。
つまり、大きな敷地の戸建を相続するよりも立地が良いタワマンの方が相続人の税金が安くなる傾向にあり、同じ不動産を相続するのであればタワマンの方が有利といえます。
こうした理由により、タワマンは節税効果が高いと言われてきました。
マンション相続税評価の新ルール
これまでタワマンは「タワーマンション節税」という言葉があるくらい有効な税金対策でしたが、2024年に入りこうした対策に歯止めをかけるためにルールが追加されました。
具体的には建物部分と土地部分に分けてそれぞれ課税額を計算するよう変更されています。
この章で詳しく解説します。
評価額の引き上げ
新しく設定されたルールによってマンションの評価は「6割を最下限」となり、計算式は次のようになります。
相続税評価額×乖離率×60%
このように、マンションの評価額は必ず路線価をベースとして相続税評価額の6割以上となることから、価額を従来と同様の節税をイメージすることができなくなります。
高層マンションは影響を受けやすい
マンションの構造上、階数が多いほど評価額が低くなる傾向にあります。
つまり、これまで相続税を抑えることができたタワマンの高層階は新ルール追加によって相続税対策の影響を受けやすくなるといえ、従来通りの節税が難しくなるといえます。
ただし、高層階の物件だからといっても専有面積が下層と変わらない場合は大きな影響が少なく、ケースバイケースという性質は維持されています。
タワマン節税効果は小さくなる
前述したように、タワマンはこれまでと同様の節税効果を得るのは難しくなります。
そのため相続税が発生する可能性がある場合は注意が必要ですが、それでも戸建てよりも節税効果は高いといえます。
少なくとも現金で相続するよりも相続税を大きく減らせることから、新ルールに沿った上で相続税を把握することが重要です。
マンションの相続税の計算方法
タワマンが相続対策として変わらず有効であるといえますが、マンションの相続税がどのようにして計算されるのかは知っておくべきです。
そして、この計算方法は改正されていることから、この章では従来と改正後の計算方法について解説します。
従来の計算方法
2023年以前に取得したマンションの場合は専有面積と敷地の価額を合算したのが相続税となり、非常にシンプルな計算方法となっていました。
そのため、顧問税理士法人や個人の税理士を介さずに確定申告を行い相続税対策をするオーナーも多かったです。
なお、相続税は評価額に対して基礎控除を差し引き、残った価額に対して国税庁で定められた以下の税率を掛け合わせることで計算することができます。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
改正後の計算方法
マンションに関連する法律が改正されたことで、相続税課税額は次のような計算方法となりました。
専有部分:固定資産税評価額×区分所有補正率
土地部分:固定資産税評価額×区分所有補正率×評価倍率
専有部分と土地部分の合算=相続税課税額
このように、建物と土地に対して区分所有特有の補正率を加え、適正な課税額となるよう変更されたことになります。
これにより従来のマンションよりも課税額は増額される傾向にあるため、2023年以前からタワマンを相続税対策として保有している人は所在階について注意が必要です。
マンションを相続したときに使える控除・特例
相続対策したからといってもマンションは必ずしも免税になるわけではなく、都市部のマンションは基礎控除を考慮しても課税額がプラスとなってしまうことも多いです。
このような場合に節税対策として利用できる特例があるため、利用できる場合は積極的に申請すべきといえます。
この章ではマンションを相続税や増税に関する控除や特例について、解説します。
配偶者の税額の軽減
国税庁が定める「配偶者の減税の軽減」によって配偶者は1.6億まで課税相当額から減額できます。
つまり、他の親族が相続するよりも配偶者の減税額は非常に大きく、相続税対策として重視すべきといえます。
そのため、相続財産の節税面において配偶者が優遇されることを知っておく必要があります。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、正式には「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」という名称で、国税庁から公開されている特例です。
不動産の相続は非常に高額となるケースが多く、相続人の生活を圧迫してしまうトラブルも発生しかねません。
場合によっては相続した財産をすぐに売却しなければ相続税が払えないということも考えられます。
そこで、この特例は条件を満たした不動産に対しての評価額を50%〜80%減額させることができ、相続人が円滑に資産を運用できるという特徴があります。
また、小規模宅地等の特例にはいくつか適用パターンがありますが、タワマンの相続では「特定居住用宅地等」が該当し、要件は次のようになります。
区分 | 取得者 | 要件 |
---|---|---|
被相続人の居住の用に供されていた宅地等 | 被相続人の配偶者 | 要件なし |
被相続人と同居していた親族 | 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。 | |
上記以外の親族 | 以下の条件を全て満たすことが要件となる。 ・海外に住んでいる場合において、日本人であること。 ・被相続人が独身であること。 ・上記の親族がいないこと。 ・3年以内に不動産を取得していないこと。 ・被相続人の家屋や自宅に居住していないこと。 ・その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。 |
|
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等 | 被相続人の配偶者 | 要件なし |
被相続人と生計を一にしていた親族 | 相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。 |
このように、配偶者は必ず条件をクリアできるもののそれ以外の親族については一緒に暮らしていたかどうかで条件が変わることが分かり、注意が必要です。
まとめ
これまで高層マンションであるタワマンは「節税効果が高い」と周知されており、多くの資産家や投資家が都市部のタワマンを購入し現金による相続を減らしてきましたが、令和6年に入りこうした対策に歯止めをける法改正がありました。
これにより従来よりも相続課税額が増加し、その結果相続税が増えることなりました。
ただし、それでもタワマンは戸建てよりも税金対策として優れていることから、相続税が不安な人はなるべく早く不動産会社に相談することをおすすめします。
投稿者プロフィール
- 1987年生まれ。高校卒業後に工場勤務し、21歳から不動産業界(賃貸)に足を踏み込みました。24歳のときからマンション、土地、一棟アパートの売買仲介に携わり、これまで決済した案件の総額は100億円を超えます。現在は妻と子、犬と一緒にのどかに暮らしています。
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