不動産売却を検討する際には、所有期間によって税率が変わることを知っておくべきです。
また、所有期間に応じて「短期譲渡」と「長期譲渡」に扱いが分かれることから、違いや注意点が重要なポイントとなります。
この記事では不動産を売却する上で、所有している期間と税金の関係性について解説します。
この記事で分かること
不動産の短期譲渡所得と長期譲渡所得との違い
短期売買における税額の計算方法
短期譲渡の注意点
不動産の短期譲渡とは?
不動産の短期譲渡とは、売買や相続によって物件を取得してから譲渡するまでの年数が短い取引のことです。
この場合、転売目的で不動産取引を行うことを制限するため税率が高くなる傾向にあります。
また、短期譲渡かどうかは取得日から売却までの日数によって決まります。
つまり、不動産の売却はタイミングが重要ということがいえます。
不動産の所有期間が5年以内の条件
不動産を購入もしくは相続や贈与によって取得してから5年以内に売却した場合、売却価格にかかわらず所得税30.63%、住民税9%が固定税額としてかかります。
また、この税額には特別復興にかかる所得税が上乗せされており、2023年においても適用されている税率となっています。
短期譲渡所得に関わる税金と控除
短期譲渡は5年を超える長期譲渡よりも税率が高くなりますが、特別控除を利用することで譲渡所得を抑えることができます。
そのため、どのような特例を利用できるかを売却する前に確認し、譲渡費用をなるべく下げる方法を把握しておくべきといえます。
短期譲渡所得の税金計算方法
短期譲渡所得を計算するためには必ず会計士や税理士に依頼が必要なわけではなく、自分で計算することも可能です。
この章で詳しく解説しますので、参考にしてください。
課税短期譲渡所得金額の計算
短期譲渡所得の課税額は次の計算式で算出することができます。
売却価格ー売却時の諸費用ー購入にかかった費用-購入時の諸費用
上記の計算によって算出された金額がマイナスであれば課税されることはなく、プラスになった場合は税率の39.63%を掛け合わせた額が譲渡所得税となります。
なお、前述した特別控除を利用することで課税額を抑えることができます。
税額の計算方法
課税額が計算できれば、あとは短期譲渡の税率を掛け合わせることで譲渡所得金額を算出することができます。
ただし、課税額が特例によってマイナスになった場合は課税額もゼロという扱いになるため、取得税における特例の利用可否は重要なポイントといえます。
具体例で理解する計算方法
たとえば3,000万円で購入した物件を5年を経過するまでに5,000万円で売却し諸費用が購入時と売却時にそれぞれ200万円かかった場合、譲渡所得税は次のようになります。
5,000万円-200万円-3,000万円-200万円=1,600万円
1,600万円×39.63%=約634万円
なお、売却する物件がマイホームなどの居住用物件だった場合、1,600万円から3,000万円を差し引くことができます。
これによって課税額がマイナスになることになり、譲渡税はかかりません。
このように、譲渡益がでたとしても必ずしも税金がかかるわけではないことを知っておく必要があります。
長期譲渡との比較
短期譲渡ではなく長期譲渡という扱いになるケースもありますが、どのような違いがあるのかについてこの章で詳しく解説します。
長期譲渡所得との違い
短期と長期では所得を継続した日数に違いがあり、5年を超えると長期譲渡所得となります。
そして、長期譲渡になることで税率が安くなり、課税される金額も変わります。
つまり、所有権を放棄するタイミングを選べるのであれば、所有してから5年を超えた時期が譲渡日となるように調整するのがおすすめといえます。
税率の比較
短期譲渡と税率を比較した場合、国税庁のHPに基づく内容では次のような違いがあります。
所得税 | 特別復興所得税 | 住民税 | 譲渡所得税 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
短期譲渡 | 30% | 2.1% | 9% | 39.63% | 長期譲渡 | 15% | 2.1% | 5% | 20.315% |
上記のように、短期と長期では倍近く支払う税金に差があるため、注意が必要です。
【参考サイト:No.3211 短期譲渡所得の税額の計算|国税庁】
【参考サイト:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁】
税金を抑える方法
税金を抑えるのであれば、5年を超えてから売却するのが有効的です。
譲渡所得が適用される条件で売却することで税金を抑えることができ、さらに固定資産税の支払いも免除となります。
また、5年以内の売却であっても居住用財産であれば国税庁が公開している様々な特例を利用することで、大きく課税額を減らすことができます。
このことからも、税金を抑えるためには売却を前提に不動産会社へ相談し、最適な時期を決めておくことが大切です。
短期譲渡を考える際の注意点
短期譲渡の要件を満たしている状態で土地や建物を売却する際には、いくつか注意点があります。
不動産の所有権を得ているからといって、自由に売却して良いわけではありません。
そこで、この章では短期譲渡を選択する場合の注意点について解説します。
反復継続に注意する
同じ行動を繰り返すことを反復継続と呼びますが、不動産取引において反復継続売買をする場合は宅建業の免許が必要とされています。
たとえば大きな土地を複数の区画に分筆し、不特定多数の人と取引した場合がこれにあたります。
そして、短期譲渡を繰り返す行為も転売目的となることから、宅建業法違反となる可能性があります。
税務署に疑われないようにする
税務署が転売行為だと判断した場合には税務調査の対象となります。
この場合は売却の内容を細かく質問され、多くの手間がかかってしまいます。
また、短期譲渡を繰り返すことで追徴課税となるケースもあることから、注意が必要です。
契約内容を確認する
不動産売買契約書を締結し引き渡しを得ることで所有権を取得することができますが、契約書の内容によっては「居住用目的として所有権を得ること」など特例が記載されていることがあります。
こうした特例は売主が不動産を譲り渡す際の必須条件であることが多く、遵守しなければ大きなトラブルになることがあります。
しかし、こうした特約条項は契約時にはしっかり確認しても後ほど忘れてしまう買主もいます。
そこで、売却や賃貸に出すといった行為をする場合は一度契約書をチェックし、問題ないか再確認することをおすすめします。
物件の状態確認と記録
短期譲渡となるケースの一つに、購入した物件がイメージしていた状態と違ったという理由があります。
たとえば車の駐車ができなかったり設備が故障していたりする場合は、購入したものの本来の目的を達成できないことになります。
そのため、購入した直後に売却することもあり得ます。
こうしたトラブルがないように、物件を購入する際には状態確認と売主とのやり取りを記録しておくことが重要です。
法令遵守と地域ルール
原則、不動産は所有権を得ている人の自由に利用することができます。
しかし、マンションの場合は犯罪に部屋を使われることを防ぐために「賃貸禁止」というルールを設定していることがあり、さらに町内会に入ることを義務付けているケースもあります。
このようなルールは法令ではないものの、地域で守るべきルールといえます。
さらに、貸している人が部屋を犯罪行為として利用した場合は賃借責任を問われることもあります。
このことからも、不動産の所有権を得た場合は必ず法令と地域ルールの遵守を徹底することが大切です。
不動産を短期売却するメリット
不動産を短期売却することで税金が高くなってしまうというデメリットがありますが、メリットもあります。
この章で詳しく解説しますので、参考にしてください。
高利益を得る理由
短期売却は高利益を得るチャンスでもあります。
なぜなら、所有してすぐに売却することで経年劣化による資産価値の減少や設備が破損するリスクを抑えることができるからです。
つまり、短期売却は購入金額と売却金額の差額次第では、高利益を生む転売になる可能性があるといえます。
このことからも、短期的に高収入を得たい人が短期売却を選択することもあります。
建物の築年数と売却額の関係
一般的に建物の築年数が経過すると売却額は低くなりますが、新築から築2年目になるラインがもっとも資産価値が下がり、その後減少率は緩やかになっていきます。
そして、築20年から30年を超えたタイミングでほとんど売却額は下がらなくなることから、人気エリアであれば築20年以上の物件を購入してリフォームを実施し、利益を上乗せして売却することも可能です。
固定資産税・都市計画税の負担比較
固定資産税や都市計画税はその年の1月1日に不動産を保有している人に対して課税されます。
つまり、年末までに所有権を移転させることができれば税負担がなくなります。
そのため、家を購入したものの転勤になって住まなくなったケースでは、購入後すぐに売却し税負担を軽減することもあります。
特例控除の活用方法
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」や「特定の居住用財産の買換えの特例」など、国税庁から公開されている特例を利用することで譲渡所得税をゼロにすることもできます。
こうした方法が利用できるのであれば、短期譲渡の要件を満たしていても損をすることなく売却できるというメリットとなり得ます。
まとめ
不動産を取得して5年以内に売却することで、譲渡所得税が高額になってしまいます。
そのため、売却することが決まっているのであれば取得してから5年を超えて譲渡することがおすすめですが、短期譲渡にもメリットがあります。
さらに、国税庁の特例を利用することで課税額を大きく減らせることができるため、どちらが特になるのか十分に検証した上で売却すべきといえます。
投稿者プロフィール
- 1987年生まれ。高校卒業後に工場勤務し、21歳から不動産業界(賃貸)に足を踏み込みました。24歳のときからマンション、土地、一棟アパートの売買仲介に携わり、これまで決済した案件の総額は100億円を超えます。現在は妻と子、犬と一緒にのどかに暮らしています。
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