低金利時代の今、老後の安定した生活を見据えて「これから不動産投資を始めようかな?」と考えている方も多いのではないでしょうか。
まとまったお金を必ずしも必要としない不動産投資は、比較的手が出しやすく、会社員を続けながら投資する「サラリーマン大家さん」も増えています。
ここでは、中でも人気のある戸建て投資とアパート投資、どちらがオトクで始めやすいかを見ていきましょう。
不動産投資にかかるコストは?イニシャルコストとランニングコスト
まず不動産投資には、イニシャルコスト(初期投資)とランニングコスト(運用資金)がかかります。実際なにが必要なのでしょうか?
イニシャルコストから見ていきましょう。
ローン事務手数料・保証料
中古物件など比較的安価な不動産は、100%自己資金で購入するケースもありますが、新築の戸建てやアパートを購入する場合、数千万単位のお金がかかってくるためローンを組むケースが多いでしょう。
その際銀行に支払う事務手数料と、ローン保証会社に支払うローン保証料が必要になります。
不動産取得税
不動産を取得する際にかかる税金で、下記の計算式で算出できます。
不動産取得税=固定資産税評価額×3% ※住宅以外の家屋の場合は4%
固定資産税評価額は不動産購入価格とは異なるので、混同しないよう注意しましょう。
仲介手数料
不動産を仲介会社を通して購入する場合に支払う手数料で、下の表の通り、上限額が定められています。
取引額 | 仲介手数料 |
---|---|
200万以下の部分 | 取引額の5%以内+消費税 |
200万円を超えて400万円以下の部分 | 取引額の4%以内+消費税 |
400万円超の部分 | 取引額の3%以内+消費税 |
出典: 初期費用の相場はいくら?初期費用を抑える5つのポイント|LIFULL HOME’S
ただし、これはあくまで上限で、半額ほどの安い手数料で仲介してくれる業者もあります。
安かろう悪かろうにならないように、仲介のサービス内容と費用のバランスを見極めるのがポイントになってきます。
印紙税
契約を結ぶ際必要なもので、不動産購入時とローン契約時のそれぞれに支払う税金です。
記載された契約金額 | 不動産売買契約書 | 金銭消費貸借契約書 |
---|---|---|
100万を超え500万円以下 | 1,000円 | 2,000円 |
500万を超え1,000万円以下 | 5,000円 | 1万円 |
1,000万を超え5,000万円以下 | 1万円 | 2万円 |
5,000万を超え1億円以下 | 3万円 | 6万円 |
1億を超え5億円以下 | 6万円 | 10万円 |
出典: 初期費用の相場はいくら?初期費用を抑える5つのポイント|LIFULL HOME’S
印紙税は契約書一通ごとに必要なもので、通常発注者と受注者が半分ずつ負担します。
余談ですが、電子契約にすると不要になるので、節税を徹底したい方は検討するのも良いでしょう。
登録免許税
不動産を購入すると、所有権が自分にあることの証明として「所有権登記」を行わなければなりません。投資物件を新築する場合は「所有権の保存登記」、中古物件を購入する場合は「所有権移転登記」です。さらに購入代金にローンを充てる場合、物件を担保に入れるための「抵当権設定登記」も必要になります。
内容 | 税率 |
---|---|
土地の売買による所有権移転登記 | 1.5% (2021年3月31日まで) |
建物の売買による所有権移転登記 | 2.0% |
所有権の保存登記 | 0.4% |
抵当権設定登記 | 0.4% |
出典: 初期費用の相場はいくら?初期費用を抑える5つのポイント|LIFULL HOME’S
司法書士への報酬
登記手続きは、自分で行うことができるものの、ある程度の知識が必要となり、調べたり書類を作成したりと手間がかかります。そのため司法書士に依頼するのも一つの選択肢になるでしょう。
どこに頼むかによって異なりますが、数万~15万程が相場です。
ここまでの項目を全部合わせたイニシャルコストの大体の相場として、物件価格の8~10%と言われています。
次にランニングコストを見ていきます。
毎月のローン返済
これはマイホームを持った方なら馴染みがあると思います。頭金をたくさん入れれば入れるほど、毎月の負担は軽くなります。
固定資産税・都市計画税
固定資産税=課税標準額×1.4%
都市計画税=課税標準額×0.3%(※)
※都市計画税を課すか否か、税率については各自治体に委ねられています。ただしどの自治体でも上限は0.3%です。
建物維持費
見落としがちなのがメンテナンス費用です。新築物件の場合でも、10年ほど経過すると修繕が必要になってきます。外壁塗装などの外回り、クロスの張替など内装のメンテナンスの費用も頭に入れておかなければなりません。
2種類ある不動産収益
では、不動産投資ではどの程度収益が得られるのでしょうか?
収益には、インカムゲイン(=賃料収入)とキャピタルゲイン(=物件の売却額-購入額)の2種類あり、両者をうまく組み合わせることで収益UPが望めます。まずインカムゲインを考える際、利回りがどのくらいあるのかが重要です。
利回りとは、投資に対して得られる収益のことで、諸経費を考慮しない表面利回りと、修繕費等も含めた実質利回りがあります。
計算式はこちら
表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件購入価格×100
実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間の経費)÷(物件の購入価格+購入時の諸経費)×100
不動産屋から提示されるのは、大抵表面利回りの方ですが、ランニングコストが収益を大きく左右するため、実質利回りをしっかり把握することがポイントです。
実質利回りを上げるには、コストをいかに抑えるかと、空室を出さない工夫が要ります。実際に現地に足を運んでニーズを調査したり、不動産投資のプロに相談することをおすすめします。
一方キャピタルゲインは、将来地価が上がる立地であるかどうかの見極めが重要です。人口の減少などで価値が下がってしまった場合、売却額が購入額を下回る可能性があるためです。キャピタルゲイン狙いの投資は、ハイリスクハイリターンの投資法と言えるでしょう。
では、実際戸建て投資とアパート投資、どちらの方が収益性が高いのでしょうか?
戸建て投資の場合の収益
当然地域や立地によって変動はあるのであくまで参考地ですが、戸建て投資の場合、平均表面利回りは5~6%とされています。ここに経費として「ローン返済額」「固定資産税」「建物維持費」を考慮した実質利回りを計算しましょう。アパートより物件価格が低く、固定資産税も抑えられる上、維持管理費もアパートより安くすることができる戸建て投資は、利回りを向上させやすいと言われています。
アパート投資の場合
一方アパート投資の表面利回り相場は6~8%とされています。ただし建築費が数千万~1億を超えることもあり、「ローン返済額」をいくらにするかによって経費に幅が出るでしょう。しかし、アパートは戸数が多いため、空室を出さず家賃収入をフルで得る工夫をすることで利回りを上げることが可能です。
儲けはインカムゲインとキャピタルゲインを総合的に判断
インカムゲインにおいては実質利回りを意識することが重要ですが、利回りが高くなくてもキャピタルゲインが狙える場合は、損はしないので気にしすぎる必要はないでしょう。どちらか一方だけを見るのではなく、総合的に判断することが大切です。
不動産投資にどんなリスクがある?
戸建て投資のリスク
戸建て投資の場合、考えられるリスクは次のようなものがあります。
- 空室リスクを分散できない
基本的に一戸一世帯のため、一度空室になると家賃収入がゼロになってしまいます。アパートに比べ入居期間が長いため、一度入ると安定しますが、いかに空室を出さないかが重要です。
- 短期で収益を上げにくい
家賃収入が一部屋分しか得られないため、アパートに比べると短期ではお小遣い程度にしか収益を得られません。あくまで小さな儲けを長期的に積み重ねる投資法です。
- 中古物件の場合、大規模修繕が必要になることがある
購入した物件の状態によって、想定したよりも多額のリフォーム費用が発生する可能性があります。
- 中古物件の場合、融資が通りにくい
耐用年数が新築に比べ短いため、不動産投資ローンを受けられない可能性があります。その場合、全額自己資金になるリスクがあります。
アパート投資のリスク
一方アパートの場合のリスクは
- 供給が多く入居者の奪い合いになる
戸建てに比べ、アパートは供給数が多いため、価格競争になりやすいです。周辺に新しい物件が立った場合、入居者を奪われてしまうことも多いでしょう。
- 入居スパンが短く、入退去手続きの負担が大きい
ファミリーで住むことの多い戸建てと比べると、学生や単身者が多いアパートは入れ替えのスパンが短くなりがちです。入居者募集費や、退去時の修繕の費用がより必要になります。
- 戸建てに比べ、共有部などの維持管理費がかさむ
戸建てだと入居者自身がやってくれる、共有部の光熱費、清掃費、エレベーターの保守点検費などが必要になります。戸数が多い分、賃料の集金、督促の負担も大きいです。
- キャピタルゲインが狙いにくい
アパート入居者が物件の購入を検討することは考えにくく、売却先が投資家に限られるため、インカムゲインをメインに収益を考える必要があります。
投資意欲と資金額に見合った投資を
今回は、戸建て投資とアパート投資にはどんなコストがかかるのか、収益の考え方や想定されるリスクを見てきました。戸建て投資は物件次第で元手が少なくても始められる一方、地道に収益を上げていく投資法です。一方のアパート投資は不動産価格が高く、失敗した際のリスクが高い分、短期での収益も見込めます。それぞれにメリットデメリットがあるため、どのくらいのスパンで利益を上げたいか、投資できる金額はいくらくらいかを踏まえて、自分に合った投資法を検討してみましょう。
投稿者プロフィール
- 1987年生まれ。高校卒業後に工場勤務し、21歳から不動産業界(賃貸)に足を踏み込みました。24歳のときからマンション、土地、一棟アパートの売買仲介に携わり、これまで決済した案件の総額は100億円を超えます。現在は妻と子、犬と一緒にのどかに暮らしています。
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